＜これまでのあらすじ＞
NHKへ向かう前にショッピングセンターでランチをしました。オムライスが食べたいといってオムライス専門店に入っておきながら、なぜかホットケーキを注文する４歳児でした。 |
|
１０．代々木八幡から炎天下を歩く
NHKの最寄り駅のひとつ、代々木八幡駅には予定通り13:30に着いた。
NHKへ向かう南口は反対側のホームにある。
そんなわけで階段をのぼって、わたって、おりて、改札を出る。大人ひとりの足なら数十秒で歩き過ぎるたったそれだけの距離を、子どもを連れてると５分ぐらいかかる。
ホームのすぐそばから踏切の音がカンカン、と鳴りはじめると「なんであんなとこに踏み切りあるの？」急行電車が通過すると「なんで電車、止まらないの？」
初めて降りる駅、見るものが新鮮らしく、いちいち聞いてくる。質問がブームの４歳児である。
時間には少し余裕があったので別にしばらく電車を見せてあげても良かったのだが、とにかく暑い。
今年は早めの梅雨明け宣言があり、７月上旬にして猛暑の到来。まるでサウナの中にいるようだ。早くNHK入って涼みたい。
ということで、駅を出て商店街を歩きはじめた。
あまり広くない道に小さなお店がたくさん並び、それなりに賑やかだ。
老舗のおそばやさんからおしゃれなカフェまで、目にも楽しみながら散策といきたいところだが、何せちびっこ連れである。他の通行人の邪魔にならぬよう、気を配りつつ過ぎるのみであった。
けん坊が「のど乾いた」と言うので、時々立ち止まってペットボトルの水を飲ませながら歩く。
途中で井の頭通りを渡る。横断歩道を待っていると、けん坊がふと指をさし「あれ、登りたい！」と言い出した。
歩道橋の階段がくるくるとらせん状になっていて、まるで楽しげな公園の遊具のように見えたらしい。
いやいやいや、何言ってんすか。あれ上って下りる気ですか。
どうせそのうち疲れたとか歩けないとか言い出すに決まっている。座りこんで動けないという最悪の事態は避けたい。余計なことはするまい。
「じゃあ、帰りに登ろうね、今登ると疲れちゃうから」と手を引っぱり先を急ぐ。
「なんでー？のーぼーりーたーいー」と不服そうなけん坊であった。
しかしこんな風に張り切っていたのも、この辺りまで。
15分も歩くと案の定、「NHKまだ着かないの〜？」だの「なんでこんなにあるいてんの？」だの文句を言いはじめた。
プリントアウトしてきた地図を見ながら、「NHKはもうすぐだよ！」と励ます。
「もう歩けない〜」とけん坊の足取りが重くなってきた頃、ようやくNHKの建物が見えるところまで来た。
すでにけん坊は半ば母の手にぶら下がるようにし、「NHKどこ〜？」と駄々をこねている。重いんですけど。
それでもけん坊を引っ張りつつ、何とか西口前の横断歩道までやってきた。やれやれ。
暑いので少し手前の日陰で、青になるのを待つ。
「これがNHKだよ。この横断歩道を渡ったところが、入口だよ」なんて話していると、けん坊、いきなり母の手を離して走りはじめた。車道に飛び出さんばかりだ。慌てて追いかける母。
いよいよNHKがすぐそことなり、気がはやったらしい。歩道のギリギリのところで待ちながら、早く青になれとばかりに、横断歩道の押しボタンをがんがん連打していた。
けん坊にとっても長い長い道のりを経てようやくたどりついた、お待ちかねのNHKだ。疲れを感じるよりも、これから起こることへの期待の方が上回ったみたいだった。
結局、建物内に入った頃にはすでに14:00近かった。
代々木八幡駅からNHKまで約8分という情報を得ていたのだが、これは20分以上かかったことになる。早めの電車で来ておいてよかった。
しかし行きでこの調子では、帰りはまず歩き通せないだろう。
「帰りはタクシー乗ろうね・・・」とつぶやく母であった。 |
|
|
