＜これまでのあらすじ＞
体操指導の藤原明美さんが登場され、待合室では体操の練習がはじまり盛り上がりはじめました。そんななか、しゃがんだまま床を見ていて全く踊ろうとしない４歳児でした。 |
|
１４．ぞろぞろ歩いてスタジオへ
体操の練習が半分ぐらいまで来たところで、スタジオへ移動する時間になったようだ。
子どもたちが先に行き、親が後からついていく形となる。スタッフさんには「お父さんお母さんも、後ろからついていきますからね〜」と優しく説明されている子どもたちだが、実質ここが、親子分離のタイミングとなる。
親は待合室の椅子に座ったまま、まず子どもだけが立ち、順番に出口の方へ進んでいく。
３歳児が出演する「おかあさんといっしょ」ではお母さんべったりで全く離れられない子も珍しくないそうだが、さすがに４歳ともなれば、別にこのぐらいで嫌がる子はいない。
ふつうにスタスタと去って行くし、行ってきますとばかりに「ばいばーい」と親に手を振る子さえいる。
と思っていたら、けん坊がひとり母から離れずにうだうだしている。さきほどから、ふにゃふにゃと母の膝に甘えていたのだ。
ここにひとりいたか、３歳児もどきが。
すると後ろの子が、「はよ行けや」という感じでけん坊の肩をちょっと押した。せっつかれ、我に返るけん坊。
「そうだ、シュッシュとポッポに会いに来たんだった」と目的を思い出したかのように、母を見ることもなく、タタタタタ〜と小走りで列の前の子を追いかけていく。
グッジョブ、後ろの男の子！
というわけで子どもたちは全員問題なく、あっけらかんと離れて行った。
スタジオに向かって行進していく30人の小さな後ろ姿はウキウキ感を醸し出し、嬉しそうにぴょんぴょこしていて可愛らしい。
保護者も後から続く。
待合室からスタジオまでの間は、けっこうな道程である。
廊下を通り、ロビーを通り、中庭のガラス越しに食堂があるのを見たり、大道具の部屋を横目に通り過ぎたりしながら、親子合わせて60名の御一行様は、ぞろぞろと進んでいく。
やがて通路がけっこう狭くなり、衣装らしきダンボールがたくさん積んであったり、楽屋もいくつかあったりした。「将棋フォーカス 岩崎ひろみ様」という名前が読めたのだけ、よく覚えている。
どこかに有名人がいないかな、なんてちょっとキョロキョロしてみたが、そんなに都合よく遭遇することはなかった。
さて、ぞろぞろと進む列のなか、ふと気づくとお母さん同士、やけに親しげに話しながら歩いている人たちもいる。
そういえば、「おかあさんといっしょ」の収録では、サクラの子どもというか、ある程度踊れる劇団の子を混ぜてるんじゃないか、なんて噂もあったな。
その根拠が、待合室でお母さん同士が仲良くしゃべってたから、ということだった。全国から抽選で選ばれた初対面のお母さんがそんなに親しげなわけがない、以前からの知り合いに違いない、という推測である。
うーん、だけどそれって多分、本当に初対面だと思うよ。
ここに来てあらためて実感したけど、お母さん達って、同じ境遇にあるものどうし、わりとすぐ親しげになっちゃうものなのだ。
例えばNHKに入る前に、玄関はどこかなーなんてうろうろしてたりする。そんな時に同じ案内ハガキを持った親子を見つけたとする。
「もしかして、おとうさんといっしょの収録ですか？」「あ、うちもなんです」なんて会話が始まったりしたら、何となく一緒に待合室に入ったりして、何となく一緒にしゃべったりしてしまうものなのだ。
女性は共感の生き物である、という言葉を思い出す。
私も列にしたがってテクテク歩いていたところ、前を歩くお母さんがキョロキョロ周りを見ていて、振り返った時に何となくこちらと目が合った。
「なんか迷路みたいで、道が全然覚えられないですね〜。帰り、自分で戻ってこれなさそう」と苦笑いしながら話しかけてくるので、私も「うんうん、絶っ対わかんないですね〜」なんて返す。
ちなみに当然というか、お父さん同士が仲良くしゃべっている様子は見られなかった。
男の人からしてみたら、会ったばっかりのお母さんが盛り上がってしゃべっているのは、きっと不思議なことなのだろうな。 |
|
|
