＜これまでのあらすじ＞
当日の朝になりました。すでに父は出勤、弟は登園。本人も早くNHKへ行きたがってうずうずしており、出発時刻までなだめるのが大変でした。 |
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８．出発準備はＯＫ？
そうこうしているうちに、やがて11:00過ぎたのでぼちぼちNHKへ出かける支度をはじめる。けん坊はＴシャツを着替えることにした。
というのも普段着ているお気に入りの服には大概、トーマスのキャラクター達だの、トミカやプラレールのロゴだのがでかでかと描いてあるのだ。
NHKに出る以上、キャラものはNGである。案内ハガキにもこう書かれてあった。
「服装は、ブランド名や、商業キャラクターが大きく表示されたものや、視聴者に不快感を与える絵柄のもの、発光するタイプの靴は避けて下さい。」
昔、山口百恵がNHKで「プレイバックpart2」を歌ったとき、「真っ赤なポルシェ」を「真っ赤なクルマ」と歌わさせられたという逸話をなぜかここで思い出す。
今はそれほど厳しくないのかもしれない。しかし、同じように子どもがたくさん出ている「おかあさんといっしょ」を見てると、当然だがキャラものは映らない。
ブランド名も、わかる人が見ればこれはミキハウスだなとか、GAPのクマがついてるなとか判別できるが、その程度だ。
みな気を遣っているのであろう。まー、服のせいで出られなくなっても本末転倒だものね。
そういえばたまに、お母さんが手作りしたと思われる、よしお兄さんやりさお姉さんのコスプレをして出ている子はいるけどなぁ。
それがもしゆうなちゃんのコスプレだったりスイちゃんのコスプレだったりしたら、やっぱNGなんだろうか。
そんなくだらないことをぼんやりと考える母であった。
そんなわけで、多少のロゴぐらいなら許されるのかもしれないが、念には念を入れて出来る限り排除していくことにする。
選んでおいた服は、頂き物のポロシャツ。黄色と青で、模様はない。ラルフローレンのワッペンが胸についているけど、ブランド名が読めるほどではない。
さらに背中にはゼッケンのように大きく数字が書いてあり、後ろを向いてしまっても目立つデザインだ。カメラ映りも考え、これでOK。
ちなみに当日になって「トーマスを着ていく」なんて主張されても面倒なので、数日前から「NHKにはこれを着て行こうね」と刷り込んでおいた。
ポロシャツを与えると、嬉々として着替えはじめるけん坊。目を離したすきに、勝手にズボンも引っ張りだして履いていた。
母としてはカーキ色を合わせるつもりだったんだけど、同じ五分丈パンツの色違いのベージュを履いている。まあ、それはいいか。
やる気満々のけん坊、さらに靴下に手をのばす。
靴下は普段から、自分で引き出しを開けて選んで履いているのだが、お気に入りのものはやはりキャラがでかでかと描かれている。
殊にトーマスの靴下とその親友パーシーの靴下が大好きで、幼稚園には毎日そのふたつを交互に履いていってるんじゃないか、というぐらいのヘビロテである。
なのでこのふたつはこっそり前夜に違う引き出しに隠しておいた。
もし聞かれたら「まだお洗濯したのが乾いてないんじゃないのー？」ととぼけるつもりだ。そうしたらたぶん納得して、違うものを選ぶであろう。
しかしけん坊の嗅覚はあろうことか、お気に入りの靴下を見つけだす。
弟まー坊が使う引き出しに入れておいたトーマスとパーシーを、「あれ、なんでここに入ってるの〜？」と引っ張り出してしまった。
あぁあ〜見つかっちゃったよ〜。
ここに来て、トーマス履くとかいってグズりだしたらどうしよう。
しかし弟の靴下にまぎれて入っていたことで、それを入れ直すことに気をとられたのか、結局選んだのはトーマスやパーシーではなく、ただのボーダー柄の靴下だった。ほっ。
しかし本来ならば夏用の短い靴下を履かせるつもりだったのだ。
そのボーダー柄は丈が長い。しかも紺と白、コントラストのはっきりしたしましまである。
ズボンと靴はナチュラルなベージュ。にょっきりのびる肌色の足。間にある靴下だけが何故か妙に目立つビビッドなしましま。
親のセンスが疑われそうな、ちぐはぐコーディネートが完成した。 |
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